「Perfume×中田ヤスタカ」を仕掛けたディレクターが遂にPerfumeを語る!@販促会議No.127
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ヤマハミュージックパブリッシングでPerfumeやCapsule、手嶌葵などのレコーディングディレクターを手掛ける中脇雅裕氏のインタビュー。Perfumeのクオリティから、それを作り出すスタッフ陣へのインタビューは度々なされるが、ディレクターは初めてか。もっと周辺の人にも色々と聞いてみたいものだ。
−Perfumeをプロモーションするにあたっての中脇さんの役割について教えてください。
中脇:アーティストを売り出すときは、通常、マネジメント事務所を中心に、レコード会社と制作会社がチームを組んで、音楽制作やレコード販売、プロモーション活動を行っていきます。Perfumeの場合は、アミューズがマネジメントを、徳間ジャパンコミュニケーションズがレコード販売を、当社が音楽製作・プロデュースを請け負っています。2003年、Perfumeが上京するにあたり「テクノ歌謡風のアイドルにしたい」という事務所の意向を踏まえ、capsuleの中田ヤスタカ君をプロデューサーに起用、音楽制作を開始しました。
Amuse×徳間の関係は語られても、ヤマハミュージックはこれまであまり語られてこなかった。ヤスタカがヤマハ所属なので、繋がりは気になっていたのだが。「『テクノ歌謡風のアイドルにしたい』という事務所の意向」というのはAmuseから出されたものだったのか。Amuse新人発掘/育成担当である元ジューシィ・フルーツの柴矢俊彦からのアイディア、という可能性はどうだろう。後の「フィフス・エレメント」構想もAmuse発案なのだろうか。というかそもそも「テクノ歌謡風のアイドルにしたい」という設定に至った経緯が一番知りたいのだが。
−中田さんを起用した理由は?
中脇:音楽プロデューサーには、自分が得意とするジャンルやスタイルをベースとして表現していくタイプの人が多いのですが、中田君はマーケット視点で考えることのできるプロデューサーです。彼は、若者カルチャーを生み出すトレンドリーダーたちが集うクラブシーンで実際に活躍しているほか、そのファッションでも注目されています。彼自身が、トレンドリーダーたちが集う世界の住人として、彼らが何を「オシャレ」で「カッコイイ」と思っているのかを肌で感じている。今の若いリスナーは、従来のような歌謡曲を歌うステレオタイプのアイドルには飽きているはずです。これまでにない新しい切り口のアイドルを誕生させるため、ユーザー視点で思考でき、新しい価値観を生み出せるプロデューサーとして、中田君と組むことを考えました。
「トレンドリーダー/クラブシーン」といった言葉は後付的でなんだかしっくりこない。2003年といえばCapsuleは「Cutie Cinema Replay」の頃で、もろピチカートフォロアー。クラブシーンとは別の世界にいたんじゃないだろうか。渋谷系の残党が集うクラブだとしても、この頃におけるピチカート的なものは既に総じてダサかったような覚えがある。ジブリとのSF三部作もまだだしなあ。マーケット視点・ユーザ視点というのは、「L.D.K」以降のような気がするのだが。
−デビューからヒットまでの道筋をどのように描きましたか?
中脇:中田君ともよく話していますが「あるターゲットを狙いたいなら、そこを直接狙うよりも、彼らがあこがれるトレンドリーダーたちに認められるものを作れば、その層に続くマスにも広がるということです。」
カエラ効果が始まる前は、「トレンドリーダー/マス」は「宇多丸・掟ポルシェ/アイドルオタ」だったということが興味深い。
−公共広告機構のテレビCMはとても印象的でした。
中脇:あのテレビCMは、10代の若者にリサイクルを訴求することを目的に作られましたが、若者のファッションリーダー的な存在である木村カエラさんが推しているPerfumeであれば、若者も支持するだろうという制作の意図だったのだと思います。Perfumeとしても大きなチャンスでした。「ポリリズム」は、あまりにも派手でカッコよすぎるということで、最初NGが出されたのです。しかし、「数秒流れる間に好きか嫌いかを判断されるテレビCMで視聴者に1曲を通して聴いてもらうためには、どこを聞いても耳に残るキャッチさや斬新さが必要だ」と力説し、さらに「若者のリアリティを肌で感じているクリエイターが作る音楽を信じるべきではないのか」と説得し、結果的には大ヒットにつながりました。さまざまなタイアップがありますが、どのようなシーンでPerfumeの音楽に接触しても、カッコいいと思ってもらえるように音楽を作っています。
NGを出したAmuseに対して、ヤスタカが説得してポリループを実現させたのは一つの伝説だが、クリエイターを信じたディレクターの支援もあったということか。
−ヒットの後は、その人気を維持していくことが重要だと思いますが、どのように考えていますか。
中脇:同じようなスタイルを続けていても、すぐに飽きられてしまいます。Perfumeは「ポリリズム」で世の中にインパクトを与えることに成功しましたから、今はクオリティを優先して、アーティストとしてのバリューを高めていくことに注力しています。「Perfumeは『ポリリズム』1曲だけじゃなくて、これからもずっとカッコいいんだよ」というメッセージを訴求していきたいのです。ですから、「ポリリズム」の後のシングルは、あえて落ち着いた雰囲気の曲にして、地に足の着いたイメージを作っています。
ポリ以降のシングル曲が、あ〜ちゃん曰く「右から左に受け流す曲」な意図はここ。なぜ「セラミガ」「シクシク」をシングルとして切らないのかと。
−原宿のトレンドリーダーたちに支持されている音楽が、秋葉原でも盛り上がっているのは、不思議な現象のように思えます。
中脇:秋葉原系の人たちも、新しいタイプのアイドルを待っていたのではないでしょうか。マーケットは違えど、現象は同じなのだと思います。
なんだか順序が逆のような気もするが。歌唱アイドルがグラビアアイドルに取って変わられて以降、マンネリ化しきっていたのだろうなあ。その辺のことはまるで詳しくないけれど。
−今後はどのような展開を考えていますか?
中脇:あまり具体的にはお話できませんが、一つには海外進出を狙っています。「YouTubeで見た」とロンドンから問い合わせがあったということも聞いています。Perfumeは、非常に日本的でありながら、世界にも通じる資質を持ったアーティスト。日本のカルチャーが海外で注目されている今、積極的に海外市場に挑戦したいですね。
海外進出!でもKylie Minogueなどの音に慣れている海外では、ヤスタカサウンドは大して新鮮でもなんでもないような気もしなくはない。そんなに簡単にはいかないと思ってしまうが・・・「FROM TOKYO TO TOKYO」ツアーを見てみたくもある。