Perfume×Pepsi NEX×辻川幸一郎

http://www.pepsi.co.jp/gallery/artist_3.html

ここ数年は毎朝伊藤園の「1日分の野菜」を飲んでいたのだが、近所の店が最近扱いを止めてしまったので、カゴメの「野菜一日これ一本」を代わりに飲んでいる。先月からAKB48がその商品のCMキャラクターとなって、野菜ジュースを視聴者と二人で一緒に飲んでいる風のソロムービーが出演メンバー全員分作られたり、*1 携帯ストラップや待ち受けFlashを抽選でプレゼントするなど、購買力に定評のあるAKBファンを取り込もうと気合の入ったタイアップぶりに感心するなどしていた。

翻ってPerfume×Pepsi NEX。今回も、Perfume信者のスポンサーへの極端なまでの無償の共感を目の当たりにする。まだCMも始まっていないのに、Pepsi NEXを箱で買い漁ったという報告をあちらこちらで見かけた。もちろんボトルキャップやその他のキャンペーンも無しに。まったく、スポンサーにとってはどれだけありがたい存在なんだろうか。

ポルノグラフィティとセットという事は、Amuseが事務所力でねじ込んだという事だ。福山雅治も2007年に同CMに出演している。サザンが活動を休止した今、IR資料にもあるように、福山雅治とポルノグラフィティとPerfumeが三枚看板というのは、いまだに実感の湧きにくい話だ。

楽曲はThe Cardigans「Lovefool」のカバー。「北欧の風」といえば同じ徳間ジャパン所属のバニラビーンズだが、最近の彼女達のサウンドは北欧から離れつつあったりする。一方で、アイドル業界では最近Cutie PaiがThe Cardigans「Carnival」のカバーを一歩先にリリースしていた。90'sスウェディッシュポップはそのソフトさにおいてテクノポップとも相性が良い。再評価と再構築ブームが来るだろうか。

選曲は誰にその権利があったのかは明らかにされていないが、ソフトでスイートな北欧の風は、Perfumeの既存イメージをなんら損なわないという意味では良いチョイスだ。Perfumeは、選曲で何かをマスに主張できるようなタイプの存在ではない。
カバー曲ならあれがいいこれがいい、果ては「たまには外仕事なのだから中田ヤスタカ×MIKIKOでなくともいい」、ファンはあれこれ言う。期待するのはファンの自由だが、Perfumeは異端的存在ながらもその「ぶれなさ加減」によって強固なイメージ像をこれまで築いてきたわけで、逆にいえば、マスにおける「Perfumeブランド」をより確かなものにしていかなければ、その存在などあっという間に忘れられる脆いものだ。「変な踊りと変な声」、この世間でのイメージを自ら誇示していく事こそ、ドーム公演も控える今年こそしっかりやっていかなければならない重要な戦略である。下手に路線変更などして、マスイメージがぶれたり、ライトファン層が離れたり、などという事はこのタイミングではあってはならない。ゆえに、CMというクライアントありきの仕事の場で（それもクライアントはこれまでにない規模のサントリー）、自曲のタイアップでも無いにもかかわらず、しかも辻川幸一郎という個性的な巨匠を相手に、いつもと同様の楽曲制作体制で、いつもと同じようにダンスを見せるという演出をそのまま突き通せた事に、むしろブランディング戦略の成果を認めるべきだろう。特に今回のCMは、東名阪でしか流れなかったNBBとは規模が違い、全国展開だ。そのイメージがマスに与える影響も非常に大きいのだ。
辻川幸一郎は非常に才能のある監督であり、斬新なアイディアはいくらでも出せただろう、しかし、今回のCMが、敢えて保守的なまでに「変な声で変な踊りをしているいつものPerfume」像が実現されていることに、安堵こそすれ、あれこれと注文をつけるのは正直望みすぎに思える。ファンならば「いつもと違う」事は面白さを感じるだろうが、マスにとっては「路線変更」にしか映らない。少なくとも、今はそのタイミングではない。極端な実験はファンだけの前で、アルバムとワンマンライブでやってくれればそれでいい。

なお、ファンとしてはこのカバー曲がリリースされるのかというのも気になるところだが、大抵はCM用楽曲は1分程度しか作らない（使われないのに全編作る方が無駄）ので、着うた30秒バージョン以上のものはあまり期待できないが、*2 一応参考までに今年の同CMに出演した三組を見てみると、L'Arc〜en〜Cielは着うた配信限定、コブクロはiTMS配信その後CD化、倖田來未は着うた配信その後CD化となっている。