Aerodynamik - 航空力学

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関和亮と真鍋大度の出会い、意気投合はPerfume「Baby cruising Love」PVのエフェクトから@ガジェット通信「関和亮 x 真鍋大度 もぐもぐインタビュー」

http://getnews.jp/archives/128411


ガジェット通信でこんな記事を見るとは。以前ガジェット通信への投稿依頼メールをもらったことがあるが、速攻断った覚えがある。

関:だいとくん(真鍋氏)と知り合ったのは、友人に面白いひとがいるよって紹介してもらったのがきっかけですね。だいとくんはもともと僕のこと知っていてくれてて、PerfumeのMVを結構観てくれてたみたいなんですよ。ぼくはぼくでだいとくんが昔開発した環境を使ったことがあって。その話をしたらびっくりして「そんなの使ってくれてんだ!」って話になって、そういう出会いがあって、いろんな開発とかデバイスを使った演出や舞台装置を作ったりしてたので、Perfumeの現場にそういうのが入ってきたら面白いかなぁと思って、そこから一緒に仕事する機会が増えたのかな。


真鍋:そうですね、もっと言うと『ベイビクルージングラブ』のMVを観てて、光源を三人が手に持ってその軌跡が空中に残ったまま流れていくって演出があって、これセンサー使ってるんじゃないの?と思って本人に直接聞いたら「違うよ」って言われておどろきましたね。演出がプログラマーやメディア・アーティストの考えそうなアイデアに近いので、プログラムだと思ってたんですよ。


関:まあ彼の期待を裏切ったんですけどね「いや、あれCGだよっ!」って(笑)。


真鍋:それで「えぇーそれリアルタイムでやろうよ!あれできるよ!」みたいな話をして。


関:あぁーそっから始まったんだったね! 「あ、できるんだ」って。メディア・アートとかもちろん好きなんですけど、それが自分の仕事の現場で使うってとこまでは意識してなかったんですよ、いままでCGで作ってきたものが自動生成できるとか。でも彼はそれを“地”でやってきたひとだから。オレからしたらヒーローですよね(笑)。


真鍋:ヒーローですか?(笑) でも、それが本当はじまりなんですよね。当時『ベイビクルージングラブ』は、ぼくの周りでは、めちゃ話題になってましたよ!誰がプログラミング書いてるんだろうって(笑)。

PerfumeBaby cruising Love」PV、光源の残像を見せるのは、坂本龍一「Risky」などの例を挙げるまでもなくよくある手法だが、これはCGで光源の軌跡を描いたもので、とても不思議な画である上に、その光源の扱い方にもPerfumeの三人の個性が表れていて、非常に面白い演出になっている。PV撮影の最後についでに撮った部分だったが、このPVの肝と言っていい。「それリアルタイムでやろうよ」という話が真鍋氏と関監督の最初のやり取りというのも興味深い。





関監督が使った、真鍋大度氏が開発した環境というのは、Max/natoのオブジェクトの一つらしい。

−先におっしゃった、昔真鍋さんが開発した環境で作ったMVって教えてもらえますか?


関:Perfumeの『コンピューターシティ』のMVなんですけど、こっそり使ってて(笑)。これ全然みんな知らないんですけど、画面を分割したり文字をランダム表示させたりとか、全部プログラムでやってて。2005年当時は、日本ではじめてプログラムを取り入れたMVじゃないかって、自分ひとりで思っててほくそ笑んでました、自己満足ですけど!(笑)


真鍋:たしかに、こういった日本のメジャーなMVで『MaxNato』が使われてるのは初じゃないですかね。僕は推していきます(笑)。


一同:爆笑


関:デモでこういう演出をやりたいってプログラムで動かした映像をそのまま編集マンに見せたら「これちょっと難しいっす!」「これちょっと時間ください!」みたいな話になって、それじゃあってことでそのまま採用になったんですよ。解像度とか低かったんですけど、引き伸ばしたりとかして使ってるんですよ。エフェクティブに使ってるのでそれもアリかと。


一同:へぇー!


関:いいものはドンドン取り入れていきたいですね。

テクノ/エレクトロニカしか聴いていなかった自分がPerfumeファンになったきっかけが「シティ」のPVだったのだが、あのエフェクトには本当に驚いた。エレクトロニカのグリッジをそのまま映像にしたような衝撃で、シンプル極まりないダンスオンリーのPerfumeと、あのエフェクト、ランダムに表示される8bitタイポ、SF感溢れる歌詞、全てがテクノ好きのど真ん中に訴えてきた一撃だった。


関さんがMax/nato使いというのも驚いたが、メディアアート人脈との繋がりのきっかけはこういうところなのか。真鍋大度+石橋素「Pa++ern」でのトークイベントとして2009/08には両者の対談が行われている。*1 「true/本当のこと」公演でのMIKIKO先生と真鍋氏の対談も2009/08。この頃に東京ドーム公演演出につながるコネクションが形成されたのだろうか。




そしてPerfume東京ドーム公演、「Perfumeの掟」での風船割り演出について。

−東京ドームの舞台演出に参加されたわけですが、一番印象に残っている演出ってありますか?


真鍋:風船爆破ですね。マスターとなるシーケンサーから制御ソフトにメッセージを送って風船をレーザー光線で割るんですけど、これが地味だけど難しかったです。僕はソフトを担当していて、ハードは石橋素氏、原田克彦氏、堀尾寛太氏、柳澤知明氏がやってます。


−地味だけど難しいって報われない感じが強いですね。


真鍋:風船を割る方法なんですけど、もちろん風船を本当に割るような高出力のレーザーなんか危なくてあつかえないですからね(笑)。まず日本では無理です。今回はニクロム線を加熱して割りました。


ニクロム線ですか! 電熱器や電気ストーブに使われてるやつですね。


真鍋:そうです。ただ、ニクロム線を加熱して風船が割れるまでの時間は幅があるんですよね。風船の個体差や環境まで考慮する様な計算は僕にはできないし、ニクロム線の取り付けが手動な時点で一定にはならない。とはいっても、コンサートでは風船の爆破、音、映像全てを同期しなきゃいけないのでどの程度割れるまでの時間に幅があるかを調べる必要があるわけです。あまりにも幅が大きいようだと仕組みを考え直さなくてはならないので。そこで、秒間5000フレームのハイスピードカメラを借りて、ニクロム線で風船を加熱して割れるまでにどのくらいの時間がかかるかという実験を行いました。ここまでやって、はじめてあの本番で使えると判断できるわけなのですが……。ただ観てる人からしたら吹き矢で割ってんじゃないの? って言う人もいますよね。それは別にいいんですけどね(笑)。


−うわぁー報われない感じですね……。でもそれは技術屋の意地ですよね!


真鍋:そうですね。それは意地でもありますし、自己満足かもしれませんが(笑)。


関:へぇーそんなことまでやってたんだ!(他人事の様に)


一同:関さんひどい!!(爆笑)


真鍋:風船爆破の演出は8小節くらいしかないのですが、そういった今まで試したことのない技術的なチャレンジがあるから、ぼくらも楽しくやれているところはあると思います。なかなか東京ドームのような大きな舞台でやれる機会なんてないですからね。


関:今回のチームがみんな理系なんですよ、プログラマーなんで。だから普段みんなおとなしいんですけど、当日現場のトランシーバーで「いきますっ!!!!」とか、いきなり大きい声出してるんですよ(笑)。あれがおかしくて(笑)。「あぁー! 普段おとなしいのに大きい声出してる!」ってそれ見てひとりで爆笑してました!


一同:関さんホントひどい(爆笑)。


真鍋:でも本当現場の緊張感がハンパなくて、みんなテンション上がってるんですよ。一回だけの公演だし、成功か失敗か分かりやすい演出なので。

かかっている手間に対して地味すぎる風船割り演出。なんというか、それこそ吹き矢でもできるようなところに、全力で仕組みを構築していく姿勢が、エンジニア魂を興奮させる。真鍋氏による詳しい解説はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20110507/p1


風船割りの実験映像。秒間5000フレームのハイスピードカメラを借りてきた、というのはこれで確認できるものだろう。





関:ぶっちゃけ、本番まで全ての演出が成功したことは一度もなかったんですよ。でも、本番は全て成功するんですよねー。あの三人(パフューム)の力ですかね、やっぱあるんですよ。持ってるんですよ!(笑)


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