Perfume「Spending all my time」、「つかみどころのない煮え切らなさがクセになる」@週刊文春2012年09月06日号「考えるヒット」
近田春夫の「考えるヒット」766回。
Gibson J-45で弾き語るシンガーソングライターmiwaが、ギターをフライングVに持ち替えて四つ打ち初挑戦、というネタから。サカナクション辺りから始まった「ダンスを一義としないようにも見える四つ打ち」に可能性が秘められている気がする、今後増えてきそう、という近田氏。スーパーカーの頃とは全く異なる文脈で、グルーヴよりもメロディーが牽引する四つ打ちというのは確かに非常に増えたけれど、個人的には、女性SSWに歌わせたこの曲の、メロディーの大袈裟感とライトなコード感、そして透明感のある音色とグルーヴの無い四つ打ちは、初音ミク、ボカロPの作る楽曲に多い構造で、YUIなどの女性シンガーとオーバーラップさせることで、その辺の若年リスナー層をターゲットとして狙った作りなのだろうかとも思う。SONY所属だし。
miwa「ヒカリへ」
で、四つ打ち繋がりでPerfume「Spending all my time」。
四つ打ちといえばPerfume。狙いなのか単に出来がイマイチなのか、何かつかみどころのない感じがして、その一種煮え切らなさが結果的には妙にクセになる、という構造かな。
とにかく今までと何かが違う楽曲なのはたしかである。
これまでにないEDMのスタイル(というかあのリフの音色とループ)で英語2フレーズの反復、という濃厚下世話なUSメジャー素材を用いながらも、出来上がったものが意外にも「薄味だし風味」、そんな感じの妙な味わいのこの曲。聴けば聴くほど初聴のEDMに引き摺られたインパクトが消えて、フラットな印象の強まる微妙な塩梅加減。
一方でPVと衣装は強烈にシュールで、尚の事印象としてサマーアンセム色が消されている。さらに、ROCK IN JAPAN FES 2012での映像が先日放映されて、そこで観た手業をメインとしたMIKIKO先生の偏執狂の様な振付には本当にびっくりした。完全に褒め言葉として「頭おかしい」が真っ先に思い浮かんだ。これはどこまでもオリジナル。肉食系な素材がここまで神経症のような表現に行きつくとは。このサウンドにこの病的な振付を乗せて踊るユニットは余所を探してもどこにもいないだろう。楽曲とPVと振付まで観てこそのPerfumeなのだけれど、ここまで極端に印象の変わる展開も初めてかもしれない。
考えるヒット「Spring of Life」
http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20120509/p1
考えるヒット「スパイス」
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Perfume×近田春夫対談@TV Bros.
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