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Aerodynamik - 航空力学

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Perfume、「Spending all my time (Dimitri Vegas & Like Mike Remix)」を加えて「LEVEL3」を米Astralwerksから配信/パッケージリリース

Perfume

http://www.perfume-web.jp/news/individual.php?id=247
http://natalie.mu/music/news/125600
http://www.barks.jp/news/?id=1000107531
http://www.astralwerks.com/

Perfume 全米デビュー決定!!


EDMの老舗レーベル、Astralwerksから全米デビュー決定!!アルバム「LEVEL3 (Bonus Edition)」をリリース!!iTunes等での配信や、CDパッケージでの全米リリースが決定いたしました!!更に、ヨーロッパを始め世界各国への、デジタル配信、CDリリースも決定しています!!


昨年10月にリリースされたアルバム「LEVEL3」に、ボーナストラックとして、「Spending all my time」のDV&LM remixと、Radio Mixの2曲を追加収録。「Spending all my time (DV&LM remix)」は、世界的人気DJデュオのDV&LMがremixを手がけています!!


10/7 (火) iTunesなどで全世界配信スタート!!10月末 CD全世界リリース!!



Perfumeは何度「デビュー」を繰り返し生まれ変わり続けるのだろうか。


ユニバーサルを通じて音源はiTMSが使える国ほぼ全て(もちろんアメリカも含む)に配信され、物理CD、所謂パッケージもユニバーサル台湾/香港/韓国/シンガポール/マレーシア/タイといったアジア圏、そしてヨーロッパはユニバーサル傘下となったポリドールからリリースされている。そうなると今回の「全米デビュー」とは何のことなのか今一よく分からないのだが、NY/LA公演を予定する10月末からの「Perfume WORLD TOUR 3rd」に合わせて、Astralwerksからのリリース扱いで「LEVEL3」が10/07より配信リリースされ、10月末には「LEVEL3」に「Spending all my time」のラジオミックスとリミックスを追加した「LEVEL3(Bonus Edition)」を配信とCDパッケージの両方でリリースするらしい。配信もAstralwerksならiTMSの他はレコチョクです、なんてことも無いだろう。Beatportでも売るだろう、Spotifyなどのストリーミングメディアにも解禁されるだろう。

グレン・メンドリンガー(Astralwerksジェネラルマネージャー)コメント


Astralwerksは90年代半ばのエレクトロミュージックブームを作ったレーベルとして知られています。1997年のThe Chemical Brothersの世界的大ブレイクを皮切りに、KraftwerkFatboy Slimなど、世界のダンスミュージックシーンで活躍するアーティストを送り出してきました。21世紀になり、さらに視野を広げたAstralwerksは、アメリカ以外からもさまざまなユニークで才能のあるアーティストを発掘し、彼らのアメリカでのキャリアを支えてきました。今回、日本の大スターであるPerfumeのアメリカデビューに向け、素晴らしいリミックスも完成しました。これから一緒にクリエイティブな仕事をしていけることを楽しみにしています。


どうせ二か月後には全て分かる話ではあるが、分かる事だけ書いておきたい。まずユニバーサルはアメリカでのリリースにAstralwerksを選んだ。大手音楽メディアの記事を見ると「EDMの老舗レーベル」と書いてあって「何だそれ」と思うが、今はそういう扱いなのだろう。Astralwerksは1993年にユニバーサルが作ったレーベルで、自身で音源を制作せず、海外のインディーレーベルの音源をVirgin/EMI経由でライセンスするだけのレーベルだった。初期はサンフランシスコのReflective主宰Jonah SharpアンビエントプロジェクトSpace Time Continuum、ベルギーR&S RecordsのサブレーベルGlobal Cutsのコンピ、Mouse on MarsStereolabを擁したロンドンの4ADの遺志を継ぐインディーレーベルToo PureからSeefeelのカタログ、VirginからはFuture Sound Of London、Rising High RecordsからVirgin経由でSteve HillageのダンスユニットSystem 7や、Irresistible ForceことMixmaster Morris、やはりVirgin経由でPlanet Mu主宰µ-Ziqと、アンビエントや音響、トランス/プログレ色の強いアンダーグラウンドなサウンドをアメリカに供給していて、レーベルの方向性にも意志があったのだろう。


Seefel - Time to Find Me (Come Inside)



流れが変わったのはやはりThe Chemical Brothers「Exit Planet Dust」、イギリスのダンスレーベルJunior Boy's OwnとメジャーのVirginにライセンスされ、そこからAstralwerksにパイプができた1996年の大ヒットだろうか。あの一枚でダンスとロックの垣根が崩れ、当時ビッグビートと呼ばれたブレイクビーツスタイルが一気にブレイクする。Virgin/EMIのライセンスでFatboy Slimも流れに加わる。


The Chemical Brothers - Leave Home


Fatboy Slim - Rockafeller Skank



同時に大きなブームとなっていたドラムンベースもVirginからPhotekやFlukeを取り入れ、フィルターハウスが来ると見るやCassiusやDimitri From Paris、Stuart PriceのLes Rythmes Digitales、AIRPhoenixをライセンス、Basement JaxxがヒットすればXLからライセンス。Virgin/EMIラインでNeu!の再発とKraftwerkの2000年代リリースにも乗っかり、Blue SixやMiguel Migsらのお洒落系ハウスを挟みつつ、VirginのBrian Enoのカタログを大量再発、Daft PunkはVirgin/EMIラインで「Human After All」から、Hot ChipRadio4DFAらのディスコパンクの流れもVirgin経由。そこでもう一度潮流が変わる。2010年からParlophone/EMIラインでDavid Guetta、Kylie Minogue、Virgin/EMIラインでSwedish House MafiaやDeadmau5が爆発的なヒットを飛ばし始め、それは世界中を巻き込むムーブメントに至る。つまり2010年からAstralwerksは「EDMの老舗レーベル」となる。「EDM」を本当に広義のエレクトロニックなダンスミュージックと捉えるならAstralwerksを90年代からの老舗と呼ぶのも分からなくはないが、流石にそれだけはごめんだ。


ビッグビート以降のAstralwerksに対しては、ディスコとファンクとR&Bしかダンスミュージックを理解できないUSメジャーがブームに乗ってひたすらVirgin/EMIをライセンスしているだけの中身の無い搾取系レーベルだと思って嫌っていたが、どっちにしろこの数年でVirgin/EMI/Astralwerksは全てユニバーサル傘下に組み込まれた。そして今のAstralwerksは、David GuettaやDeadmau5らで稼いだ金で、自ら金になるEDM若手達をピックアップするレーベルになっている。かつてのメジャー系ライセンスレーベルというイメージは捨てなければならない。今回の件でコメントを載せているGlenn Mendlinger上級副社長は、EDMサイト「inthemix」が選ぶ2014年のEDM業界に最も影響を持つEDM業界人ベスト50の8位に選ばれた。*1 Perfumeが今Astralwerksからリリースする理由はただ一つ、Perfumeをアメリカで売るなら、今のアメリカのEDMラインに乗せるしかない、そうユニバーサルが判断したのだろう。


Porter Robinson - Divinity ft. Amy Millan


Mat Zo & Porter Robinson - Easy




次に、Perfumeが初めてヤスタカ以外の他人のリミックスをリリースする、これも中田ヤスタカと一心同体であったPerfumeにおいては大きな出来事だ。

あ〜ちゃん コメント


中田さん以外の人が曲をいじるのは初めてだったので最初は抵抗がありましたが、聴いてみたら超かっこいい! みんなも1回聴いてみたほうがいいと思う。世界で10本の指に入るDJさん(リミキサー)なんだって。こんな慎重派な私でも思わず体が動いちゃった!


のっち コメント


Perfumeの感情を乗せないボーカルスタイルや上品さを残してイメージを大切にしてくれたのがうれしかった。


かしゆかコメント


私たちがいつもライブで言っている「日本のカッコいい音楽を世界に届ける」ことが実現できてとてもうれしい。リミックスには抵抗がある人もいると思うけど、聴いて絶対後悔しないよ。きっとリミックスも好きになるし、原曲も好きになると思う。世界中のたくさんの人に届くといいな。

あ〜ちゃんのコメントが色々と通販感。「みんなも1回聴いてみたほうがいいと思う」「リミックスには抵抗がある人もいると思うけど、聴いて絶対後悔しないよ」 。相当に保守的であろう日本のリスナーへ向けて、リミキサーやEDMそのものに対する反発を読んだ上での真正面を向いた慎重で誠実な発言だろう。


勿論中田ヤスタカでない人達によるエディットやリミックスがライブ音源やテレビ企画様に制作されることはある。いわゆる繋いだだけのメドレー物から、寺田創一師匠による「エレクトロワールド 癒しミックス」、リキッドルームのイントロ付き「ポリリズム」や、Zepp Tokyoのポリループ増し「ポリリズム」、ベルリンのアート集団ゲイポップユニットApotheke(活動休止後現在は京都に移住し日本にて活動再開)が手掛けた代々木ディスコミックス。これらについては音源はほぼ商品化されていない。ヤスタカは完成後に自分の音源を他人に触られたくない人だ。Perfumeとの握手会でアイドルに目覚め、Perfume楽曲のマッシュアップで最初の注目を浴びた、Perfumeに対してとても思い入れのある人であろうtofubeats君がメジャーから最初のリミックス集「University of Remix」をリリースする際も、ヤスタカは彼の手によるリミックス楽曲収録のオファーを断った。


そんなヤスタカが、Astralwerksのリミックス打診を快諾した。もうこれは政治だ。先日新譜の「Cling Cling」を聴いた、今更感のあるヤスタカペンタトニックとオノマトペ的なサビとダブステサウンド。どちらかと言うときゃりーぱみゅぱみゅ仕事で多用してきた手法で、典型的なヤスタカサウンドというよりも「ああ海外向けっぽいオーダーに対して淡々と曲を提供したな」という冷めた距離すら感じた。あの静謐な「CAPS LOCK」をリリースして以降のヤスタカ仕事は、メンタリティに大きな変動があったのだろう、全ての提供作品に仕事と割り切った冷めた距離感を感じずにはいられない。


「Cling Cling」MVは欧米から見た「勘違いされたアジア」を作るため美術界の巨匠の手を借り、セットと美術に限界まで投資した結果、「それだけ」のMVとなってしまい、これまでのPerfumeのMVが持っていたアナログな手法で楽しいアイディアを詰め込んだ面白さは何処かへ放り出されてしまっていた。そして今回CDよりもシングルの本体と言える、少数キャパで回った対バン映像を細かく収録し、西脇姉妹のコラボまで収められたライブツアーダイジェスト映像集を観て、その時も思った。このシングルは音楽作品ではない、もはや政治なのだと。「LEVEL3」によってPerfumeのイメージとサウンドはある意味現在の更に先を狙い澄まし、そして先へ行き過ぎた、ごく小規模の対バンツアー、「Cling Cling」に丁寧に添えられた沢山の映像達、そして今回の「ぐるんぐるんツアー」は、「LEVEL3」の時代すら追い越す強烈なスピードに振り落とされたファンの目線にもう一度立つ仕事だった。そしてPerfumeはまた政治の場に戻る。Astralwerksからは「iTunes等での配信」とある。なら、iTMSだけではない、Beatportにも置かれるだろう、Spotifyから配信もされるだろう。UltraやTomorrowlandといった超大規模イベントで流れることもあるだろう。アメリカに「『JPN』的なPerfume」を持っていったところでビジネスにはならない、そうユニバーサル/Astralwerksは読んだ。EDM自体がリミックスで成り立つカルチャーでもある。直近でアメリカ進出に失敗した少女時代という偉大な先行者の存在を鑑みた上で、正直アメリカなど相手にせず、CHVRCHESのような次世代欧州シンセポップ的な売り方をして行くのかと思っていたが。


リミックスの出来は聴いてみなければわからない。リミキサーにはDimitri Vegas & Like Mikeが選ばれた。イギリスの老舗クラブミュージック雑誌「DJ MAG」が毎年作るDJランキング*2 、昨年では4位にランクされているとどのメディアにも書いてある、プレスキットにそう書いてあるのだろう。参考までに、上位20位までこういう方向性のランキングだ。

  1. Hardwell
  2. Armin Van Buuren
  3. Avicii
  4. Tiesto
  5. David Guetta
  6. Dimitri Vegas & Like Mike
  7. Nicky Romero
  8. Steve Aoki
  9. Afrojack
  10. Dash Berlin
  11. Skrillex
  12. Deadmau5
  13. Alesso
  14. W & W
  15. Calvin Harris
  16. Nervo
  17. Above & Beyond
  18. Sebastian Ingrosso
  19. Axwell
  20. Aly & Fila


好きか嫌いかは別として、世界中を飛び回りトップクラスに稼ぐDJであることはこれを見て分かるだろう。もうちょっと一般的な知名度の人を見ると、Daft Punkで22位、Paul Van Dykで32位、Carl Coxが46位、ヤスタカ好きを公言するMadeonが59位。Umekが97位に入っていたのにはびっくりした。これのトップクラブ100のリスト*3は、上位はほぼイビサで占められ、南米陣が続く中、14位にベルリンBERGHAIN/PANORAMA BAR、49位にWOMB TOKYO、67位にageHa。大体これでこの雑誌のランキングの方向性が分かってもらえただろうか。



百聞は一見にしかず、リミックスの出来を想像しながらDV&LMを聴いてみるといい。


Dimitri Vegas, Martin Garrix, Like Mike - Tremor


Dimitri Vegas, MOGUAI & Like Mike - Mammoth


Dimitri Vegas & Like Mike ft Wolfpack & Katy B - Find Tomorrow ( Ocarina )




2年前に「Spending all my time」がリリースされた時、PerfumeのEDMへの接近は危険だと思った。しかし、「2006年頃に欧州でエレクトロシーンが大いに盛り上がろうとしていた時期に、それをいち早くJ-POPに取り入れるという革命的な行為を成し遂げたのも、Perfume中田ヤスタカだった。この一見危うい挑戦も、彼女達にとってはある意味において『原点回帰』でもある」とも書いた。そして1年後、「Spending all my time」はカンヌ国際広告祭で大きな進化を遂げ、それまでのPerfumeのパブリックイメージすら覆す強烈なイメージと共に世界へ向けて披露された。Perfumeが革新的なユニットであり続けるなら、リスナー側にもまた革新と覚悟が問われ続けるのだ。


ライブでのファンとの間に形成されるあの暖かく心地よい空気がこのやり方でも伝わると信じているのならば、あらゆる事に挑戦してみればいい。Perfumeのこれまでの海外ツアーに足を運んだ人達は、欧米の大規模なEDMムーブメントを支えるような若者たちではなく、テレビからラジオから溢れ続ける怒涛のEDMカルチャーに耳を塞ぎ、極東の異文化をインターネット経由で愉しむような数寄者であった。そういう人達をも超えて世界と対峙する、これはそういうことだ。

Perfumeは「アイドル×ダンスミュージック」の先端を突っ走っている存在であってほしいという個人的な願望は変わることは無いだろう。2007年当時に「エレクトロ×アイドルポップス」という試みは途轍もなく新しく刺激だったし、Scritti PolittiからMax Tundra「Which Song」へ至るエレクトロニカからインテリジェントファンク経由の「ナチュラルに恋して」、バレアリックハウス/コズミック系Nu DiscoやChillwave経由の「スパイス」、そして2012年はドラムンベース「ポイント」やUSメジャーのEDM経由の「Spending all my time」と、Perfumeはそういうフロアで鳴るサウンドとの掛け合せの挑戦の連続の中にいる。


http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20130119/p1

[MV] Perfume「Spending all my time」




LEVEL3

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