観劇記録 「(500)日のサマー」((500) Days of Summer)アメリカ 2009年公開
渋谷シネクイントにて鑑賞。The SmithsやJoy Division、Pixiesをありがたがって聴いているナイーヴなロマンチストの文化系サブカルオタク男子が、とびきりキュートで自由奔放だけれども醒めたリアリストの女の子に「運命の恋」をし、振り回され、すれ違い、フラれ、そして再会するまでの過程を、ランダムな時間軸によって男目線から辿っていく、そんな映画だ。
もうね、全ての文化系サブカルオタク男子にとって、あらゆるシーンが胸にグサグサと刺さる名作ですよ。逆に女性が見たらさっぱり面白くないだろうという気もします、男は頼りないし個性的なヒロインには共感できないし。これはThe Flipper's Guitarあたりに青春を捧げた者なら否が応でも観ざるを得ない。そして放心状態になるがいい。これは、情けない男、自分の話なのだと。観ている間、主人公に自らを投影をして悶々とするだろう。シャイな音楽オタクは皆、あんな感じの可愛いのにちょっと変わった女の子の彼女が欲しくてしかたないんだ。世界共通なのだなこの感情は。
MV出身の監督による、テンポのよい編集(幸福な時間、悲しい時間、時間軸のシャッフル具合が素晴らしい)、センスのよい音楽、小気味良いユーモア。はいはいシネクイントでかかるオサレ映画じゃないですかと舐めてたら、琴線に触れまくられてエンドロール後もしばらく茫然自失。
冒頭から悲しい結末ありきで進むがゆえに、幸せな時間の描写はとても切なく、そして醒めてゆく心はどうしようもなく不安だけれど、両者の心の移り変わりの様はネタバレになるので書けないけれども、主人公の成長によって季節は移ろい、残酷なだけの失恋映画に終わらなかったのが救いとなって、この映画をもう一度観たいと思わせてくれる。良作。