関和亮インタビュー、ファンと物語を共有してゆくこと@Pen 2010年6月1日号
なんだか「超二流」、と呼ぶことすら抵抗を感じる扱いになってしまった、サカナクション「アルクアラウンド」以降の関氏。デザイン技法の講師として、Penに登場。
最初に手がけた「モノクロームエフェクト」ジャケットについて。
キャッチーな曲に、”レトロフューチャー”という印象を受けたと振り返る。脳裏に思い浮かんだのはフリッパーズ・ギターやピチカート・ファイヴなど、1990年代に”渋谷系”とくくられていたグループが持っていた、ポップなグラフィックだ。
「既存のアイドルと同じ路線でビジュアル化してしまっては、差別化が図りにくい。あの頃のポップさを取り入れながら、彼女達の世界観を作れないか」と考えた関さんは、音楽性に沿ってクールな印象のビジュアルを提案。ジャケットやビデオの彼女達を、無表情のイメージで撮影していった。
渋谷系のポップなグラフィックというのは、つまり信藤三雄の仕事に他ならない。当時の信藤三雄といえば、特徴的なカラーコピートーンの色味と、独特のタイポグラフィ使い。「スイートドーナッツ」のアイドルアイドルしたデザインから一転ポップさを残したままクール&シンプルになった「モノクロ」だが、その源泉が信藤三雄とはちょっと不思議な感じがする。今に続くPerfumeのロゴも「モノクロ」から。あのロゴは誰の仕事だろう。
メジャーデビュー後、「近未来期」ではモノトーンで色みを押さえた世界観へ。
「楽曲がエレクトロ色を強め、クラブミュージックのようになっていた時期でした。僅かに色みを加えたこともありますが、基本は人形のように、まるで実在しない存在のようにしてもいいのではないかと考えたんです。」
その世界観が、アイドルに夢中になる層以外にも伝播。「音楽やサブカルが好きな層をも巻き込みながら、ファンが拡大していくざわめきを感じていた」と関さんは言う。
今は完全に捨て去ってしまったこの頃のビジュアルだが、この時期が最もビジュアルとして「テクノ」であった。アイドル特有の喧しいほどのカラフルさを排除したことで、一気にアイドル障壁を消した上に、「女の子×SF」という強烈な個性を獲得する。男の本能として「女の子×SF」がどれだけ魅力的なのかは今更語る必要も無いだろう。例えば「プラグスーツ」一つとっても、そこには語りつくせない美学がある。趣味性に訴えるデザインで、アイドルオタ以外のサブカル文脈から一気に注目を浴びた時期だった。
「作品ごとにテーマはありますが、それを押し付けずに、ファンと物語を共有していくことが肝要。だからビジュアルはシンプルかつ自由と言う事を心がけています。解釈の幅があることで、ファンと共有できるものがある。」
ライバルとなるアイドルが常に「過剰」なビジュアルを目指す中で、だだ独りシンプルを貫き続けるPerfume。関流シンプル=スタイリッシュさが、サウンドと相まってより独自のキャラクターを構築する。
ただ、過度のメッセージ性を持たない事で、解釈の幅を生んだり物語を共有することも重要だけれども、たまには、Velvet Undergroundのように、シンプルだけれどもその時代のアイコンになるような、そんな主張をもった氏のデザインも見てみたいと思う。